2000 NHK杯国際フィギュアスケート競技大会(第22回)-3

12/02

わりと早く目がさめた。
外をみると、晴れ!
これなら飛行機が降りられないということはない、今日来る友達もホッとしているだろう。

混むかもしれないかな、と少し早目にバス停に行く。
「只今の気温」あ、今日はマイナスじゃない。。。
昨日より随分気温が高い。暖かい・・・わけではないが。
会場内の熱気が、お天気にまで作用したのかしらん(そんな莫迦な^^;)。
待ってる間に寒くないのはありがたいな。

臨時バスも出ているようだった。
拡声器片手のお兄さん、今日もご苦労様です。
間違ったバスに乗らないよう、また普通にバスを使ってる地元の人にも迷惑にならないよう、いろいろ、大変だろうな。どうしたって行列で歩道をふさいでしまうし。
こらこらそこの若者、時間どおりバスが来ないからと言って、お兄ちゃんを責めないように。
凍った道路は怖いのだからねん。

昨日と違って、バスは停留所ではなくアリーナ入り口付近に停車した。
本来ならば少し歩かなければならないので、この配慮も嬉しかった。
バスの中で会えた友達と、会場前の列に並ぶ。
当日券、SS席は Sold Out になっていた。お、座席が埋まるか~(^^)?

開場。
スターティングオーダーを貰おうとホワイトボードのところにいくと、係員が何やら張り紙をしている最中で・・・。
何だろう、と覗きこむと『ストイコ選手』『棄権』の文字が。

「えーーっ! エルヴィス棄権!??」

あまりの驚愕に思わず、頭の中の言葉がそのまま出た。
そんな、昨日練習してたよ。

わたしのそんな声に、掲示をしていた係のお姉さんが振り向いて、気の毒そうな顔で説明をしてくれた。
今朝の練習は出ていたのだと。それで、足の状態がやはり思わしくないので棄権を決めたのだということだった。。。

ああ。
無理は、絶対にしてほしくない。
だけれど、日本まで来て、当日の公式練習にまで出て。。。そこまできて、棄権。
まして、ギリギリまで出られるかどうかわからず、直前に出場が正式決定して。
その為に、急遽旭川に駈けつけた彼のファンもいる。

ここで無理をして悪化させたら、それこそ長野の二の舞になってしまう。
だから棄権の決断は正解だろう。それをした彼を、偉いと思う。
しかし反面・・・観たかった。エルヴィスの演技を目の前で。
昨日練習を少し観ることが出来たのは、貴重なことになってしまった。

感傷に浸ってばかりもいられない。
とにかく本番なのだから。
数十分繰り上がると予告されていた男子SP、結局当初予定されていた時間どおりに始まった。グループを3つに分ける必要がなくなったからか。

今日の席は、同じくブルーシートの一列目、メインカメラが左手にある。放送席の斜め後ろの辺だった。
あら、NHKよりもアメリカABC放送のブースのほうが、中央寄りにあるわ(お金ですかいね?^^;)。
伸び上がると五十嵐さんのお顔を拝見できなくはないので、わたくしご機嫌(笑)。垣間見る程度で良いのでございます。ええ。

友達と談笑しつつ、またいろんな人にご挨拶しつつ、リンクを挟んで対面の席を何となく気にして。
あ・・・そっと抜け出して、ご挨拶に行く。武史くんの、お母様。
競技会には、滅多にいらっしゃらないけれど、今回はお父上がお留守番とのお話。
そーーっと行って静かにご挨拶してそーーっと帰ってくる(笑)。

席に戻ると、反対側から手を振ってくださる、嬉しくって友達と一緒に手を振り返す(^^)。
もう、武しゃん、あなた幸せもん、頑張らないと!

さて! 男子ショート。
真向かいのリンクサイドは関係者席。その一番前に・・・エルヴィスが。座っていた。
両手を組んで、あごにつけて。

第1滑走、アンソニー・リウ。
衣装が観たことある・・・去年と同じプログラム。
一番、ということでやはり緊張もあるのか、全体的に固いような印象。

2番目に何とトベル登場~!
今シーズン、プロ転向のニュースを寂しく聞いた記憶があるが、戻ってきたのね。
いわゆるプロとしての、そういう大会に出ていないのなら、当然出場権利はある。
観てるとほんとに楽しそうで、勝負は二の次、って感じがした。やっぱりスケーターはスケートしないとね! ジャンプを失敗しようが、別に良いのだ、滑れれば。そんな気分で、にこにこと眺めた。生で彼を見るのは、実は初めてだったと気がついた。

3番、アンドレイ・ヴラシェンコ。
“円熟”という形容詞が似合うようになってきた・・・。
しかしその、ハートマークが散ってる衣装はちょっと(^^;。
ジャンプを全て成功させ、あとは終盤、と思いきや、突然、演技をやめてレフェリーの前に滑ってきた。

ああ~・・・遠目だけど、ズボンを靴の下で止めてるテープがはずれた? それとも靴紐か。
何か拾って、え、靴のビスじゃないよね?
ちょっと不安になるが、紐を締めなおして、中断した場所から再滑走。
拍手、そして手拍子。うん、今日のお客さんも素敵だ。
中断は、採点には影響しないんだろう・・・な。この場合は。

4番。出ました、プルシェンコくん。
ウォーミングアップのときから思ってた。なんてまぁ、でかくなったんだい!
育っちゃって、もう(笑)。
それでもって衣装がところどころシースルー・・・ううううう。ちょっと・・・な・・・。

そして音楽は『ボレロ』。
ジャンプも軽々と決めて、どうだと言わんばかりに迫ってくる。

んだけど、なんで『ボレロ』にしたんだろうな?
このプログラム、この曲である必然性は何処に・・・しかも、いきなり音楽上では終盤のはずの、盛り上がった曲調から始まるから、なおさら。
確かに、凄いよ、うん。凄い。だけど。。。

『ボレロ』は違う・・・。

李成江くん。
全身緑色の衣装。・・・・・・中国スケート連盟さぁ~ん! 衣装、考えましょう衣装。
ま、中国に限らず「?」な衣装は、あちこちであるんだけど。
彼のは、プログラムも衣装も、一昨年の「孫悟空」だっけ? カンフー調のが一番好きだな。あれはよく似合っていた。

その李くん、4トゥ、3アクセル+3トゥも決めて、彼もさすがに跳ぶ。
っと、2アクセルで。転倒!?
どしたのどしたの、ひっかかったの? ちょっとびっくり。

フィニッシュ後、「うぁ~、あのジャンプがぁ~」といった表情としぐさ。そういうところ、中国選手としては珍しいわよね。
点数が出て、エレメンツが予想よりかなり低め。
いくら2アクセルで転んだからって、他あれだけ決めてるのに?

このときは、ちょっと低過ぎる~、とわめいてたのだけど、どうやらスピンの回転数も足りなかったり、ちょこちょこと減点要素があったらしい。
それじゃ仕方ないね。。。素人さん、目の前でスピンの数まで数えてません(^^;。

このグループの最後、イリヤ・クリムキン。
いやん、なんで貴方もシースルーなのよぅ(^^;。流行ってるのか? ・・・ロシアで。
ちょっとジャンプがいまひとつかな。音楽がやたらと耳について困った(^^;。
第二グループ。
最初が武史くんだ。どうも最近、最初か最後、という順番が多い。
写真を見、英語を必死に解読して想像を膨らませた、今季のショートプログラム。
ただ走っているところが殆ど無いよ、凝りに凝ったプログラムだよ。
そんな前評判を、頭の中で反芻しながら。
『ドン・キホーテ』、初見。

とても耳慣れた音楽。
白いシャツ、黒のベストにズボンと、シンプルな衣装。武史くんらしい。
そしてこのプログラムは・・・。

細かい。物凄く細かい。
ぎっしり。ジャンプの間を走って埋めるんじゃなくて、とことんステップが詰め込まれている。
それも、ちゃんと・・・リズムにぴったり合わせてつくってある。
三拍子の部分は三拍子で。後半、テンポが上がればそれに合わせて。きっちり、音符でリズムを刻んでいる。
(後日ビデオで観返して、ランの部分でさえ、音楽に合わせて走ってるのには感動しました。ほんとなんだよ、ビデオ録ってあったら観てくださいまし。これは贔屓目ではないと思うが。如何でしょう)

ちょっとこれ、かっこいい! かっこいいよ、武史くんのドン・キホーテ!

目の前の姿とそれに対する切ない思いと、どこか別のところで滅茶苦茶高揚している自分と。そのふたつを同時に抱えて、持て余していた。

だって、出来としては、決して良くはなかったんだもの。
全体にスピードは無かったし。ジャンプも、4+2、イーグルから3アクセルステップアウト、3ルッツ・・・転倒~!?
うぞ! 声に出る。うそだぁ、なんでルッツで転ぶのよ~(T_T)。

大きな手拍子、フィニッシュ。顔が崩れて、舌を大きく出す。手を腰に当てる。顔が心持ち沈む。
不本意だよね。本人も。
こんなシナリオではなかったはず。

拍手の中、観客に挨拶。
リンクサイドには、花束やぬいぐるみを持ったファンたちが群がる。
ねえ・・・そんな・・・・・・。

「呼ぶなぁ~!! 呼ばないでくれぇ。。。」
思わず、搾り出してしまった声。
なんで? なんでこんな結果のときに・・・無邪気ににこにこしながら呼びつけられるんだろう??
この物言いは、暴言だ。それは、よくわかっている。そして、彼女たちを責める気などこれっぽっちも、微塵も、無いのだ。だけど。。。

つぶやかずに、いられなかったのだ。
わたしには、とてもできないから。たぶん、そういうことだ。昨年のN杯以来、すっかりトラウマになってしまったか。ならば、こっちの勝手な事情だ。物言いをつけられる立場ではない。それは自分で理解しているのだけれど。。。

誤解しないでほしいのは、決して花束やぬいぐるみに言いがかりをつけてるわけではないということ。応援は嬉しいだろう、そしてその気持ちを伝えたいのもわかる、ものすごくよくわかる。選手も安心するかもしれない。きっと嬉しいだろう。
でもそれが「直接」でなければならない必然性は・・・?

時と場合と、それから選手個人と。それで大きく変わってくる。
だから、彼が素晴らしい演技をした後だったら、こんな風には思わない。

だけど、こんなときには、投げ込むだけにしてあげて。。。

彼は必ず受け取りに行くから。
そういう、人だから。。。
まっすぐ帰った姿は、今まで殆ど見ていない。
早く帰してあげたい、ゆっくり考えさせてあげたい。何より、無理な笑顔をつくらせたくない。。。

「でもわたしはうらやましいよ。ああいうことができる強さ」
友達が、フォローしてくれる。
そうだよね。そして、このシーンが無かったら、きっとわたしも寂しく思うのかもしれないし。それに、武史くんがどう思っているかもわからないのに。しっかりした関係を築いている人もいるのに。
ごめんね、貴女がたへ。わたしの勝手な暴言を。ごめんなさい。

そして、うらはらなもう一つの気持ち。
わたし、このプログラム・・・すごく、好きかもしれない。いや、はっきりと好きだ。大好きだ!

きっとこれ、物凄く素敵なプログラムになる。こなれてきたら。彼がしっかりと自分自身のものにしたら。
とろけそうな笑顔と、凛々しくて爽やかな、男の子の色気。何を言っておるのかわたしは(笑)。
だってそんな気がするんだもの。絶対! このプログラムは、かっこいい。
♯この後、ことあるごとに「ドン・キはいいよ!」と連呼しまくることになったのは皆さまご承知の通り(^^;
すぐ次が、田村岳斗くんだった。
ベートーベンの、月光。ちょっと透ける、うすーい水色の岳斗くんらしい衣装。
ん~、しかし、ジャンプが・・・。
3点台も出てしまう、厳しい結果。
だけど、プレゼンはけっこう上がった。

トリファン・ジバノビッチ。
彼も『The Mummy』、これ去年と同じだね? 衣装は変わっているけれど。
やっぱり、金と黒なのか。。。

10番滑走、ロマンくん。
この後女子のフリーがあるため、タチアナさんの姿は無い。ちょっと寂しいな(笑)。
いつもふたり、仲良さそうなんだもの。うん、旦那、がんばるのだ(しかしジャンプにミスが出た・・・と思う)。

11番がカナダのベンくん。
この気だるい音楽、いつか岳斗くんがやった。岳斗くんはオレンジの透ける衣装だったが、ベンくんは無地のTシャツ風と同色のズボン、という非常にシンプルないでたち。
演じる人が変わると、こうも変わるものか。
ジャンプもきれいに決まって、ご機嫌そう。

ラストは、ドミトレンコさん。
この方ももうベテランですか。。。
音楽がなんと『ドン・キホーテ』、使ってる場所は武しゃんと違うけど。今季流行りの曲(なんでだろう?)。
衣装からいくと、彼はその、初老の郷士を演じているのかしら?(^^; というか、その妄想の騎士か。ならば・・・成程。
男子SP終了。
はい、例によって順位は出ません。ああーーーーーーもう!
思い立って、ロビーに言ってみる。BSデジタルの画面に映ってないかしら。。。
そのうち掲示がされるだろうけど、待っていられない、目の前で競技は終わっているのに。

結局、掲示を見た友達に教えてもらう。
武史くん、7位。フリーは第一グループか。。。

彼らしいスケートを見られるようにと、それだけを祈って。
まだ、わからないよ。常に期待を持ち続ける。
それが、わたしのスタイルだから。