2000 NHK杯国際フィギュアスケート競技大会(第22回)-5

12/03

雪がちらちら。
郷里の雪に近い、大き目のぼたん雪。
気温はやっぱり少し高そう(雪降ってて気温が高い、というのも何だけど)。

新聞は買わなかった。
「転倒」「出遅れ」「痛いミス」そんな見出しは御免だ。
今は、目を背けさせてもらう。これからフリーがあるのだからね。見てらっしゃいよ、明日は。

さて、せっかくの北海道、魚を食べなくちゃ!
わたしはもう一泊するが、m さんもK子さんも今日帰らなければならないので、お昼にお寿司屋さんに行こう、と夕べ決めていた。11時に待ち合わせる。

宿からもらってきた、というマップを見ながら候補を探すが、たいていどの店も11時半~12時開店。
競技は13時半からとはいえ、また突然予告なしに早まる可能性もある。
12時からっていうのはツライ。入って頼んで待ってる時間もあるしなぁ。慌てて詰めこむのも落ち着かないし。

地図を広げてああだこうだと言っていると、通りすがりの一人のおばさまが声をかけてきた。
「何処に行きたいの?」
ああ・・・・・・旭川ってあったかい。

「この辺でお寿司を食べたいんですけど、何処かお勧めはありませんか?」。
まさかそんな答えが返ってくるとは思ってなかっただろうおばさま、しかし考えながらいくつか教えてくれる。
並ぶけれどお値打ちの店とか、この店はちょっとお高いわよ、とか。
ああ、ありがとうございます。旭川ってなんてあったかいんだろう。

残念ながら、そのお勧めのお店は12時開店。ちょっと無理だった。
通りにいくつか並ぶお店のひとつに向かい、開店時間を尋ねる。11時半か。。。
ちょっと早めに・・・は無理だったので、11時半で構わないから中で待ってても良いかと聞くと、快くお店に入れてくれた。ありがたかった。

N杯歓迎、というような張り紙もあり、なんだか嬉しくなる。
ほんとに来てよかった。初めて旭川と聞いたときにはぐらぐらしたけど(すみませぬ^^;)。
泣いても笑っても今日が最後。
ともかく気合だぞ。

タクシーでアリーナへ。
スターティングオーダーをドキドキしながら(もう、ほんとにドキドキしながら!)見る。
第一グループの・・・・・一番、最後。
ほっ。

次いでエキシビションの出演者を見る。
男子の欄は当然、まだ空白だが。。。あ。「Local Skater」の枠が無い。

各種目4位から(女子だけは5位の章枝ちゃんも)。
ありゃ~、そしたら最悪の場合、今季の武史くんのエキシビション、生で観れないかもしれない。。。
って、弱気になっちゃダメだー! それなら自力でもぎとりなさい、権利を。信じているから。
(これもプレッシャーでしょうか・・・^^;)

友達から、ちらりと新聞の内容を聞く。
「思いっ切り書いてあったよ、本・田・転・倒って」
うるさぁい。ちくしょー。明日は、明日は絶対ちがうんだからっ。
(↑もちろん、書いた記者氏に対してよ。念の為)

今日の席は、昨日よりも少しだけずれたところ。
なんと後ろの席には知り合いのSさん、そのまた斜め後ろにはMLに参加してくれてる女の子がお母様と一緒に座っていた。
偶然ってあるんですね。

ごそごそと日の丸を準備して。
良い演技だったら、立つからね。そう宣言する。

男子フリー、開始。

第一滑走でトベルくん。
彼らしい(?)不思議な模様の入った、ぴったりした衣装で。
やはり競技会から遠ざかっていたのがよくわかる、ジャンプはなかなか決まらない。だけど、なんだか今回、彼は次元が違うところにいるような気がするので。
ところで、彼のジャンプって、空中での腕の置き方が、独特よね。
左右対称じゃない。どっちかが上がってる。

トリファンくん、今日は何だかもっのすごいドレスシャツにスーツというのかタキシードというのか。どうやらテーマがドラキュラ、ならば、と思ったものの。
コスプレ系より、彼にはもっと似合うスタイルがありそうだ。
ジャンプもいまひとつ決まらず。

アンソニー。
彼はジャンプがはずれても魅せてくれます。
プログラム、去年とは違うと思うのだけど、何故だか印象が同じだった。何でだろう。

4番目に、岳斗くん登場。
『The Mummy』、お、衣装がバージョンアップしてる。
4回転なんとか、中盤ジャンプが殆どダブル。。。しかし後半踏ん張って、トリプルのコンビネーションも入れる。

頑張った頑張った。他に形容する言葉が無い。頑張りました。演技後はもう、フラフラ。
次には、しっかり最後まで決めた形で観たいな。
体力つけてネ(^^)。

ロマンくんは、見慣れたいつもの(ゴメン)衣装。
去年も2度生で観たせいかな。このプログラム、すごく長くやってるような気がするけど、まだ2年目だよね。
昨日銅メダルをとったタチアナさんが、リンクサイドで見守ります。ほのぼの(*^^*)。
さて。
武史くん。
アランフェス。
目はそらさないから。全て、観ているから。
ギターの音色。空気が、変わる。
中盤。
曲調が少し変わるところから、ぐぅっと、入り込んだ。
指先から、目線から、彼が紡ごうとしている世界を、懸命に受けとめる。
流れる、流れる。目の前には、アランフェスの荒野。痛い。
心が、痛い。
じわぁっと、涌き水が染み出るような拍手。
放心気味のわたしの耳に、言葉が飛びこんできた。「立とう!」
はっ、と、日の丸を持ったまま立ちあがる。旗を思い切り振って、拍手して。

ジャンプの出来じゃないんだ。彼を観てわたしが覚える感動は。
上に上がろうと、必死でもがいている姿。その真摯な思いに。魂に。
思いを伝えようと、全身で音楽を奏でる、その姿に。
心臓に直接突き刺さってくるような、その心に。痛みに。そして、ストレートな笑顔に。

だからいつでも、彼の演技を観たら泣くのだ。
完成度や出来不出来に関わらず。必ず心に刻み込まれる、その何かに対して。

客観的な評価は、彼に対してはできないのよ。
批評も批判も、プロフェッショナルにおまかせする。わたしはただただ、全身全霊をかけて、拍手を贈るだけだ。
ありがたいことに、後ろの席はSさんだったから。
「見えないから座って」などと無粋なことは言わないでくれた。
第二グループ。
印象に残ったのは、李くんとプルシーだったな。。。

李くん、上手になったわ。ほんとに、上手になった。
ジャンプのシャープさもさることながら、表現の仕方が。
独特の雰囲気を持ってるしね。
あとはやっぱり衣装・・・かなぁ(^^;。黒は非常に似合うんだが。

ドミさん。
きれいなんだけど・・・ジャンプがいまひとつ決まりきっていなかっていたような。

プルシェンコはね、もう。
貴方は凄いよ。ジャンプもお見事、おまけにその色気は何~?(^^;
一体きみは何歳なんだ、怒らないからおねーさんに正直に言いなさい(笑)。
しかしそれだけ技術を詰め込みながら、プログラムとしてのインパクトは。。。あまり濃く感じられなかったのは何故だろう。
曲の切り返しについていけなかったかな。わたしが。

ベンくん。
昨日はとても良かったんだけどね。ちょっと今日は・・・。うーん。カタい。
ひょっとして、台を意識してしまった?

アンドレイ。
彼も、今日はいまひとつ。。。やっぱり、きれい、ではあるんだけど。
得点はあまり伸びない。

最終滑走、クリムキン。
昨シーズンと同じ『牧神の午後』。
葉っぱの衣装、実はそれもところどころシースルーなのだよね(^^;。
ちよっと今日はジャンプの失敗が目立った。得点もかなりバラついている。

う~ん、これはかなり微妙だ。
プルくん以外、順位の見当が全然つかない。プレイス、けっこう荒れてるんじゃないかしら。
気になる。気になる。気になる気になる気になる!

双眼鏡で、放送席のモニターを覗いてもらう。例によって、文字ははっきり読めないのだが。。。
「武史くん・・・上から・・・4番目・・・?」

何? 何だって!?
そ、それはフリーの順位か、総合か。心中騒然。
というのも、実はさっき。。。

確かラストのクリムキンくんが滑っていたときだ、関係者席で演技を観ていた武史くんに、係員らしき人が近寄り、何事かを伝えていたようだったから。
武史くん、最初「はい?」って感じで、それから頷きながらその話を聞き、立ちあがってへこへこ走りで奥へ消えていったのだ。
リンクサイドにいる誰かに挨拶をして。そして、その表情が。

え、え、それって、それってさぁ、何、もしかしてもしかして!!?

今滑っている彼が、何位になっても。武史くんが現時点で確保している順位は・・・ってこと?
席に並んだ三人、わたわたそわそわ。穏やかではないのよ。

と、そうこうしているうちに、スクリーンに総合順位が! 表示された。

で、出来るんなら、もっと前からやってくれぇ!!

思わず叫びたくなったが。
きっと、運営側にリクエストが殺到したに違いない。。。
などと、のんびり考えてる場合ではない。確認した。間違いなく。
たっ、たったっ、武史くん、総合4位に浮上してるじゃないの~!

うひゃあ・・・そこまで上がったんだ・・・7位から・・・。

後日談になるが、やはりプレイスは荒れていた。
武史くんには、2位をつけたジャッジもいれば、8位をつけた人もいる(なんぼなんでも、8位は無いと思うがのぅ^^;)。
そして、得点について議論されたりもしていた。主に見かけたのは、ドミさんやアンドレイのセカンドマークが低いんじゃないか、という意見で。

だけどわたしが思ったのは。

つけられなかったんじゃないか、ジャッジも。
だって、武史くんのあの演技を観てしまったら。

それ以上のインパクトが、訴えかけるものが無ければ、プレゼンテーションは上げられないんじゃないだろうか。
彼らの演技は確かにきれいで、まとまっていた。ベテランらしい味もあって、それぞれの個性も生きていて・・・。
だけど、何だろう。

「自分はこれを表現したいんだ、だから見てくれ!」というような気迫、ほとばしるような勢い、そして必死さ。
所謂エネルギーの爆発みたいなものは、あまり響いて来なくて。きちんとおさまって、落ち着いてしまっていたような。。。
プレゼンテーションって、それこそ“presentation”であって、しなやかさや踊りへの評価ではない、のよね?

うまく、言えないけれど。
その場でも、口には出せず・・・だけど、その後の整氷中に、そんな話を座席でした。
三人とも、熱烈な武史好きだから、そんな話になるのよ、と言われてしまえばそれまでだけど。

そしてまた、あくまでこれは個人的な印象であって、実際のジャッジがどのような基準で採点しているのかは、わたしには到底わかるはずなどない。あくまで、好き好きの範囲であるかも知れず。
説得も納得も、しようともしてもらおうとも思ってはおらず・・・ただ。この日の思考の過程を残しておきたいと思ったので。
話を戻そう。

4th Takeshi Honda

間違いなく、その表示を確認して。
思わず、手を握り合っていた。

エキシビションに出られる!
Local 枠ではなく、入賞者として。
この際、順位はどうでもよかった。ほんとに。
出場権を、自力で勝ち取ったこと(他選手との兼ね合いも、当然大いにありますが)。
それが、嬉しかった。

やっぱり、やるじゃん! さすがは武史くん!
そして単純に、もう一度武史くんの演技が観られること、エキシビナンバーが観られることが、素直に嬉しかった。
も、にやけまくっちゃって。

愛嬌のあるどーもくんアイスショーはそっちのけで、ノートPC立ち上げ、結果を打ち込む。
「エキシビションに出られるよ!」
このあまりに簡略過ぎた書き込みにより、演技内容に誤解を与えてしまったようで・・・(^^;。
後刻、猛反省することになったのだが(その節はほんまにゴメンナサイまし<(_ _)>)。このときはただもう、幸せでしかなかったのよ。

単細胞で単純なわたしである。
残るはエキシビション。わーい。